「なんで聞いてくれなかったの?」「いや、言ってもらわないと…」
印刷トラブルの現場でよく起きるのが、こういうすれ違いだ。デザイナー側は「常識でしょ」と思っていることが、印刷所には伝わっていない。逆に印刷所が「ふつう確認するでしょ」と思っていることが、デザイナーには抜け落ちている。
この記事では、印刷発注時に必ず伝えるべき仕様の全項目をリスト化する。経験が浅いうちはコピーして使い回してほしい。
なぜ「言わなくてもわかるでしょ」は危険なのか
印刷所はデザイナーの意図を読んでくれる存在ではない。仕様書に書いていないことは、印刷所側の「標準設定」で処理される。
その「標準」がクライアントの期待と違っていたとき、刷り直しの費用を誰が負担するかという話になる。多くの場合、仕様を書かなかった発注側の責任になる。
「口頭で言ったのに」は証拠にならない。仕様は必ず文書で残す。
伝えるべき仕様:全リスト
1. 仕上がりサイズ
- 仕上がりサイズ(mm単位で明記。例:A4=210×297mm)
- 折り加工がある場合は折り後のサイズも記載
- 変形サイズの場合は特に注意(標準外サイズは割増になることが多い)
2. ページ数・面付け
- 総ページ数(表紙・裏表紙を含めて数える)
- 表裏どちらも印刷か(片面 / 両面)
- 冊子の場合は製本方法(中綴じ / 無線綴じ / 平綴じ など)
3. 用紙の指定
- 用紙の種類(コート紙 / マット紙 / 上質紙 / 特殊紙 など)
- 坪量(g/m²)または銘柄名
- 冊子の場合は本文と表紙で別々に指定する
NOTE
「おまかせ」にすると印刷所の在庫や判断で決まる。意図した質感にならないことがある。
4. 色数・カラーモード
- カラーモード(CMYK / 特色 / モノクロ)
- 表裏それぞれの色数(例:表4色・裏1色)
- 特色(DICやPANTONE)を使う場合は番号まで指定
5. 塗り足し・トンボ
- 塗り足しの有無とサイズ(通常は天地左右各3mm)
- トンボが入っているか
- 断ち切りデザインか、余白ありデザインか
NOTE
塗り足しがないまま入稿すると、断裁時に白い縁が出てしまう。これは入稿後に気づいても修正が大変。
6. 後加工・オプション
- PP加工(グロス / マット)の有無
- 箔押し・エンボスなどの特殊加工
- スジ入れ(折り加工前の筋入れ)の有無
- 穴あけ・ミシン目・角丸など
7. 部数
- 印刷部数(「100〜200部でいい」はNG。数字で確定させる)
- 予備を含めた数か、正味の数か
8. 納期・納品形態
- 希望納品日(「なるべく早く」は伝わらない)
- 納品先(自社 / クライアント直送 など)
- 納品形態(箱入り / 帯あり / 小分け など)
9. データ形式・入稿方法
- 入稿データの形式(PDF / AI / その他)
- フォントのアウトライン化・埋め込みの確認
- 入稿方法(オンライン / メール / データ便 など)
10. 校正・色確認
- 色校正の有無(本機校正 / 簡易校正 / 校正なし)
- PDF校正で代替するか
- 色校正の送付先と確認者
現場のコツ:「仕様まとめシート」を作っておく
毎回ゼロから仕様を書くのは時間がかかる。よく発注するフォーマット(A4チラシ、会社案内冊子、名刺 など)ごとにテンプレートを作っておくと、抜け漏れが減って確認も速くなる。
クライアントへの確認事項と印刷所への伝達事項をまとめて管理するのが理想だ。
入稿前のチェックもセットで
仕様を伝えるだけでなく、データ側の準備も並行して進める必要がある。入稿前に確認すべきポイントは印刷入稿前チェックリスト|現場デザイナーが確認する5項目にまとめているので合わせて読んでほしい。
伝え漏れが事故を生む。仕様は「書いたもの勝ち」の世界だと思っておくといい。
- サイズ・ページ数
mm単位で明記。折り後サイズも忘れずに
- 用紙・色数
「おまかせ」は禁物。坪量・カラーモードまで確定させる
- 加工・納期
PP加工・スジ入れなどは見積段階から含める
- データ形式・校正
色校正の有無と確認者を事前に決めておく